婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
「…………数年前から……用意して、言い出せないまま……今に至ります」
膝に肘を置き下を向き顔を隠してぽつりぽつりと説明を始めました。
「王宮に……その、セリーナの部屋があると、何かと、その、便利だから……着替えが必要な場合とか……その、疲労の際に休める、個室があればいいと思って、これから、夜会とかもあるし夜が遅くなっても泊まれるように……」
ポツリポツリと説明をするジェフェリー様。この部屋はジェフェリー様が私のために用意をしてくださっていたのですね。全く知りませんでしたわ。
「ありがとうございます、とても嬉しいですわ」
お部屋を用意してくださっていたのですね。そう思い感謝を告げました。伝えるのが下手というか……伝わりませんわよ! もうっ!
「後ろ……見て」
後ろ? 振り向くとそこには純白のドレスの裾に向かって小さなピンクと紫の宝石がまるで花のように見えるデザインのものでした。可憐で華奢なデザインはおそらく皆さんの目に触れると注目を浴びる事になるでしょう。
「まぁ。とても素敵なドレスですわね」
「…………セリーナのデビュタントのドレスなんだ」