婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
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「すみません、記者の方はいますか?」

 初老の男性が新聞社の受付にやってきた。何か秘めた事がありそうな様子が窺える。


「こちらでお待ちください」

 受付の女性に案内された場所は簡素な応接間といった感じだ。一角にある硬いソファに腰かけた。

「お待たせしました。私は記者をしているベルナールと言います」

 ベルナールは応接間にいる男を見た。何か疲れているような感じがしたが、目だけはしっかりとこちらを見ていた。

「急にやって来て失礼します。私はロイズと申します」


「いえいえ歓迎しますよ。ロイズさんは何かを告発したくて来られたのですか?」


「! っどうしてそれを?」

 驚くロイズ。フロス商会の実情を包み隠さず話しに来た。昔は良かった。しかし今はそうではない。

 今のままではフロス商会はダメだという気持ちを伝えに来た。もっとみんなの意見が通るような会社にするべきだった。ワンマン社長ではダメだと思いながらも自分のするべきことを後々にした罰だ。会社や組織が大きくなるとおざなりになるところが多々出てきて報告しても握りつぶされた。会社の為にと言うより自分の保身の為だった……そう言う自分に嫌気が差した。


「しがない記者の勘ですよ。お話を聞かせてもらっても?」

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