婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
「よし!」

 深呼吸してセリーナの教室に入る。

 ……あれ? いない。どこに行ったのだろうか。もうすぐ休憩時間は終わりそうだ。


 ちょんちょんと肩を触れられた! もしかして……セリーナか?


「誤解なんだ! どうか話を聞いてくれ! セ……」

「まぁ! 私でよければ! 今日の放課後にサロンへお邪魔しますね!」

 にこりと笑う世話役の娘……ジュリなんとかと言ったか?

「いや、それが誤解だ! 私は、」


 ちょうどタイミング悪くセリーナが教室に戻ってきたようだった。

「セ、」

「殿下、それでは放課後に」


 ジュリなんとかはセリーナを見て笑っていたような気がした。セリーナは私に会釈をして席につき次の授業の準備を始めた。
 鐘が鳴る……次の授業が始まる合図だ。

 くっ……! ここまでか! 授業に遅刻するわけには行かない。 

 学生の本分を忘れてはいけない! ましてや私は王子……皆の手本とならなければならない! 急いで教室を後にした。


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