婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

「もうすぐ世話役の期間が終わってしまうのは寂しいですわ。殿下は優しくお世話をしてくださいましたもの」

「そうか」

「このお茶美味しいですわね」

「そうか」

「この前用意してくださったお菓子とはまた違いますのね」

「あぁ……」

「ジェフェリー様、お話とは一体なんですか?」

「あぁ……」


 なんなの! 帰ってくる答えに覇気がないじゃないの。もしかして緊張して……?


 王都に住んでいた頃、私に会いにくる男たちも皆私の可愛らしさの前ではひれ伏すしかなかったもの。会話にならなかった男もいたわ。ジェフェリー様もきっとその部類なのかも! あんがい初心なのね!


 いくらセリーナ様が美しいと言ってもお人形さんですもの。会話にならないのでしょうね。


「セリーナ様に悪いですわ。ジェフェリー様とこうやって二人でお茶をするなんて」

「そうだな……」

「セリーナ様は平民の男子学生と仲がいい様でよくお話をされていますよ」

「……っそうか」


 あれ? 表情が変わった。

 きっと呆れていらっしゃるのだわ。平民なんかと仲良くしている名前だけの婚約者に。


 私は裕福な商家の娘ですから、あいつらとは格が違うのですもの。もし婚約破棄するにあたってお金が必要なら、お父様に頼んでも問題ないくらい、うちに資産はあるもの。



 安心してね! ジェフェリー様!!
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