婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

「セリーナ様、ここが僕の家がやっているパン屋です」


 大きくはないけれど清潔な建物で立派ですわね。支店があるくらいですもの。この辺では有名なパン屋さんなのでしょうね。


 所狭しとパンが並んでいますが、売り切れた商品も多々ありました。


「お昼頃にはたくさんの種類が並ぶんですけど、今は売り切れで種類が減っています。このパンがうちの売りです」

 バターの香りがする艶々のクロワッサンでした。お菓子作りをしていて分かったのですが、きっと手間暇かけて作られたものなんでしょうね。


 パン作りの工房は見えるようになっていて、何人ものパン職人が工房内の片付けをしていました。本日分のパンは作り終えたのでしょうね。


「美味しそうですわね。あら、こちらのパンは見たことが有りませんわ」

 丸くて可愛らしいコロンとしたパンです。艶々としていて我が家では見た事がないパンでした。

「中にクリームを入れてあるんですよ。スイーツの様な甘いパンです。こちらは特に女性に好まれています」


 女性人気のパンなんですね。確かに見た目も可愛らしいですもの。


「クリームが入っている甘いパンなんて初めて見ますわ。購入したいのですが、どの様にお会計しますの?」

 パンといえば食事パンが主流です。甘いパンと言われ興味がありますが買い求め方が分かりません。


「はい。ここにトレーとトングがあるので、お好きなものをトングで取りトレーに載せます。その後、あちらの会計係に渡して袋詰めをして貰い、会計となります」

 自分で好きなものを選んでトレーに載せて会計をするのね。
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