婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました

「本当ですか? 私に気を遣っているのではないですか?」


「お菓子を売ったお金は寄付させていただきましたし、お菓子を作るにあたって費用や時間もたくさん費やしてくださって。本当に頭が下がる思いです」


 金額はごくわずかなのかも知れない……でもこれだけ喜んでくださっているもの。サムさんとダニエルさんの言葉を信じましょう。

「良かったですわ。それならまた参加させていただきたいですわ」

 お菓子を作ると言うのはとても楽しく、でも大変でした。一人で作れるようになるまではまだまだかかりそうです。

「そのときはまたお手伝いをさせて下さい!」


「お願いしますね。私も今回のことでお菓子作りの大変さを知って勉強になりましたし、サムさんのおうちのパン屋さんでもお話を聞かせてもらって、有意義に過ごせました。甘いパンがとても美味しかったですわ。クロワッサンもとても香ばしくて、また買いに行くとご両親にお伝えくださいね」


「ありがとうございますセリーナ様」


 その後歓談していますとジュリアナ様の姿が見えました。目が合ったので、挨拶を。

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