婚約してから十年、私に興味が無さそうなので婚約の解消を申し出たら殿下に泣かれてしまいました
「……頼って、いいと言った」
「仰る意味が分かりかねますが、お気になさらずに。殿下が気になさることではありませんもの」
殿下に気を遣わせてしまいましたわね。機嫌が悪いのでしょうか?
そっぽを向かれましたわ。熱でもあるのか顔が赤いですわ。
早くお話を切り上げて差し上げないと、体に差し支えがあっては困りますね。
「私は殿下の足枷にはなりたくありません。もう自由になっても宜しいのですよ? 私の事は気になさらずに、」
「セリーナ! いったい、何を! なんの話だ!」
殿下の紫色の瞳が驚いた様に見開きました。久しぶりに殿下と目が合いましたわ。
「十年間、殿下と婚約をしておりましたが、殿下を支えるどころか私が至らないばかりに、」
「待て! なんの話を、」
「……婚約の解消、」
「しない! 絶対にしない! させない!」
あら? 私何か怒らせる様な事を……こんなに必死な殿下を初めて見ましたわ。