私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
夕食を済ませ、一度蒼志の自宅マンションに帰る。

「あ、河冨に連絡しなきゃ!」
河冨に“帰る準備できた”とメッセージを送ろうとスマホを操作する。

すると、後ろから蒼志の手が伸びてきた。

「え……あーくん?」

そして、星那のスマホをテーブルに置いた蒼志。


「━━━━━いい加減、やめない?」
星那を見据えて言った。

「え?」

「門限までに、ちゃんと“俺が”家まで送るから。
だから、河冨に頼るのやめて?」

「え?え?」

「もう星那は、俺の“婚約者”だろ?
星那のことは、俺がしてやる!
送り迎えも、身の回りのことも」
「うん…」

河冨に、迎えがいらないことを伝える。
そのままギリギリまで二人は、ソファに並んで座り話をしていた。


ゆっくり歩いて、15分程の距離。
心なしか、口数が少ない二人。

「なんか……初めてこんな長く一緒にいたから、別れるのが余計に辛いな……」
「うん…」

「でもまた、明日も会えるから!」
「うん」

「つか!毎日、会おう!俺が毎日会いに行く!」
「うん」

「星那」
「ん?」

「なんか、言って?」

「好き!」
背の高い蒼志を見上げ言った、星那。

「うん、俺も!」

「好き!大好き!」

「フフ…俺の方が、好き!大好き!」

「いっぱい好き!
あーくんのこと、言葉では表現できないくらい好きだよ!」

「フフ…うん!
━━━━━星那、キスしていい?
ここ、誰もいねぇし」
「うん…!」

蒼志の顔が近づき、チュッ!とリップ音がして離れた。
「…………パパとママに、話してみるね……!
同棲のこと」
「うん…!」


そして、久瀬川の屋敷前に着く。
屋敷の門前に、河冨が立って待っていた。

「ゲッ…河冨……」
「ん?あ!河冨!」

蒼志と星那の存在を認めると、ふわっと微笑み二人の元へ近づいた河冨。

「お嬢様。
お帰りなさいませ!」
丁寧に頭を下げ、微笑んだ。

「ただいま。河冨!」
星那も微笑む。

蒼志の手からさりげなく鞄を取り、蒼志を見据えた。
「蒼志様、わざわざありがとうございました。
後は、僕が。
……………お嬢様、旦那様と奥様が待ってますよ?
参りましょう!」

そして星那に再度微笑み、腰を抱き門に促した。
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