私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
河冨は、蒼志を見ていて“俺に似ている”と思っている。

星那への、狂おしい愛情や独占欲。

星那に嫌われたくなくて、強く出られないところも。

だからこそ、蒼志が何を考え何をするか、手に取るようにわかるのだ。



『━━━━━━旦那様、奥様。
大切なお話があります』

星那がいない昨晩。
河冨は、星那の両親と対当していた。


『おそらく、蒼志様のことです。
星那様に、プロポーズをなさるかと…』

『だろうな』
父親が、少し切なく瞳を揺らし煙草を咥えた。

『寂しくなるわね…』
母親も同じく、切なく瞳を揺らした。

『だが、相手は蒼志だ。
あいつなら、受け入れるしかないな』
『そうね』

『━━━━━その際、僕もお嬢様についていきたいと考えてます。
蒼志様が住んでいるマンションの真下の階、押さえておくつもりです。
許可してくださいますか?』

『『…………フッ…!』』
見据えて言った河冨に、フリーズする両親。
しかしすぐに、噴き出してクスクスと笑いだした。

『え……』
河冨は、目をパチパチして両親を見る。

『いや…ほんと、お前も星那が好きなんだなぁと思ってな!』
『予想はしてたけど、まさか本当に私達の思った通りに言ってくるなんて……!』

『俺達は、構わないよ?
河冨が星那の傍にいてくれたら、安心だしな!』

『そうね。
………でも河冨、いいの?』

微笑む父親と、窺うように見つめる母親。

『え?
“いいの?”とは?』

『貴方は、貴方の幸せを見つけなさいって言ってるのよ。
囚われたみたいに星那の傍にいても、星那は手に入らないのよ?』

『僕の“幸せ”は、久瀬川 星那様のお傍にいることです。
お嬢様と離ればなれになる方が、とても辛いことです。
例え一生、僕の手に入ることがなくても……』

両親を見据え、はっきりとした口調で話す河冨。
そんな河冨を受け、母親も『だったらいいの。河冨の好きなようにしない』と言った。


『それで……お願いがあります━━━━━』




「━━━━━パパ、ママ。
ただいま!」
リビングに入るなり、微笑み挨拶した星那。

「「おかえり!」」
「どうだったんだ?蒼志とのお泊まりは」
微笑み言う父親に、星那は更に嬉しそうに笑って言った。

「あーくんに、プロポーズされたの!」

「フフ…やっぱり、そうなのね!
良かったわね、星那!」

「うん!
それでね!今度、あーくんが挨拶に来てくれるの。
パパとママ、会ってくれる?」

「「もちろん、いいよ!」」

微笑み頷いた両親に、星那は嬉しそうに笑ったのだった。
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