私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
同棲のことを両親に話すと“それは、蒼志と会って直接話をしよう”と言われ、次の日蒼志を入れて久瀬川邸で夕食をすることになった。


「おじさん、おばさん。
今日は、お招きありがとうございます!」
丁寧に挨拶をする、蒼志。

「あぁ。久しぶりだな、こんな風に食事するの」

「はい」

「星那から聞いたよ。プロポーズのこと、同棲したいってことも」

「はい。
来年、僕達は大学四年です。
僕は父の会社に就職することは、もう確定してます。
そして大学の単位はほぼ取れているので、来年から少しですが…アルバイトという形で父の会社で働くつもりです。
卒業後、すぐに仕事に馴染めるように……
だから━━━━━
籍を入れるのは、卒業後で構いません。
それがけじめですから。
でも、星那とはもう……離れたくありません。
許可してくれませんか?」

食事には手をつけず、真剣に父親を見据え言う蒼志。

「星那との結婚を、俺達は反対するつもりない。
寧ろ…大事な愛娘である星那を渡すのなら、蒼志しか考えられないと思っている」

「はい」
父親も真剣に蒼志を見据え言い、蒼志は静かに頷く。

「でも、同棲は許可できない」

「おじさん…!」

「蒼志のことだ。
卒業してすぐにでも結婚を認めてもらえるように、早くから働くつもりなんだろ?
“就職しても、落ち着くまでは”と言われるのを見越して」

「はい。
きっと…おじさんとおばさんなら、そうおっしゃっるだろうなと思って……」

「ん。
しかし、結婚と同棲は全く違う。
“けじめ”と言うのなら、同棲なんか必要ないだろ?
古い考えだろうが、俺は同棲は好きじゃない。
中途半端な感じがしてな。
ちゃんと卒業して、俺に一人前なところを見せてから、堂々と星那を迎えに来い。
言葉ではなく、目に見える形を見せろ。
俺が星那との結婚は、蒼志しか考えられないと言ったのは、蒼志をことを長年見てきた結果だ。
だから、俺にちゃんと“星那を幸せにする”という形を見せろ」

「パパ…」

「星那も、ちゃんと蒼志を支えられるように頑張るんだろ?
まだお前は、俺達や河冨に支えてもらっている状態だ。
夫婦ってのは“好き”と言う気持ちだけでは成り立たない。
まずはちゃんと、しっかり自分の足で立てるようになってからだ。
そして初めて、大切な相手を支えることができるようになれるんだ」


父親の言葉に、蒼志と星那は大きく頷くのだった。
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