私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
「━━━━だったら、おもいっきり見せつけたら良くね?」

ある日の夜。
蒼志は、友人である・大騎(だいき)智久(ともひさ)の二人と居酒屋にいた。
二人共、蒼志や星那の高校からの同級生だ。

二人は、蒼志を“王子”星那を“姫様”と呼んでいる。

大騎の言葉に、蒼志はグラスをコトッと置いた。
「はい?」

「だから!
姫様から離す方法がないなら、向こうが王子と姫様の傍にいるの耐えられなくなるようにしてみたら?っつってんの!」
大騎が持っていた枝豆の皮で、蒼志を指しながら言う。

「要は…その執事の前で、ベタベタしろってことだろ?」
「そう!それ!」
智久の言葉に、大騎が大きく頷いた。

「あーね」

「ピアスとか指輪とかじゃ、牽制になんないんだろ?
だったら、そうするしかねぇじゃん!」

「………うん」

「まぁ、そもそも!
姫様の親父を説得すりゃあ良かったじゃん!
“執事なんか必要ない”ってさ」

「だって、あの過保護な星那の両親だぞ?
そんな言葉通用しねぇよ!
それにおじ・おばは、河冨のこと“かなり”信用してっから!
俺の両親も口を揃えて“河冨なら、安心だ”だって!
しかもわざわざ“蒼志のことも頼むな、河冨!”って挨拶してよぉ!
…………なんなんだっつうの!!」

「でも王子」
「んぁ?」

「警戒すべき人間は、執事だけじゃねぇと思うが」

「は?」

「は?って。
“あの”久瀬川 星那だぞ!?
お姫様だぞ!?
大学でも、常に狙われてんだからな!」

「………」

「王子、警戒すべきは執事じゃなくて“大学の連中”だと思う」


━━━━━━━━━
━━━━━━━…………

それから自宅マンションに帰った、蒼志。

鍵や財布や煙草、スマホをテーブルに無造作に置いた。
「ん?
あ、スマホ、全然見てなかった!」

スマホと煙草を持ってキッチンへ向かい、換気扇の下に立つ。
換気扇のスイッチを入れ、煙草を一本咥えた。

火をつけ、吸いながらスマホを操作する。

「んー、星那からだ!」

【あーくん☆
お電話が繋がらないから、メッセージ残しておくね!
明日、講義が終わったらお茶しよ!って、芽郁(めい)ちゃんに誘われたの(^^)
行きたいんだけど、いいかな?
明日の朝、会った時にお返事ください!
じゃあ、また明日ね!
ほんとは、声を聞いてから寝たかったけど……
眠いから寝ます(-.-)Zzz
おやすみなさい♪
星那☆】

「やだな…」
灰皿に、煙草を潰して呟く。


でも、あまり縛りつけると嫌われるだろう。
星那に嫌われたら、生きていけない。

「許可、するしかねぇじゃん……」


蒼志は、ため息をつき呟くのだった。
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