私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
次の日の朝。

星那を迎えに行き「良いよ。楽しんでおいで?」と余裕ぶって微笑み言った蒼志。

しかし━━━━心の中は、ぐちゃぐちゃに荒れていた。


講義が終わり、河冨の車に乗り込んだ星那。
「じゃあね!あーくん!」

「ん。もしなんかあったら、連絡してこいよ?」
「うん!ありがとう!」

嬉しそうに微笑まれると、本当に何も言えなくなる。

本当は、行かせたくない。

例え相手が女でも、俺以外の人間と会うなよ!
俺以外の人間に、その可愛い笑顔見せるなよ!
その声で呼ぶのは、俺の名前だけにしろよ!

どうしようもない欲ばかり出てきて、頭がおかしくなる。

蒼志は、頭を軽く横に振りゆっくりドアを閉めた。
そして河冨に向き直った。

「まぁ、大丈夫だと思うけどさ!」

「はい」

「もし━━━━━」

「大丈夫ですよ?」

「は?」

「万が一、男性の存在があれば、お嬢様を連れ帰るつもりですから!」

「………」
河冨の発言に、フリーズする蒼志。

「何ですか?
それが、言いたかったのでは?」

「……フッ…お前、ほんと…俺の言わんとしてること、わかんだな?(笑)
スゲーや!」

「不本意ですが、僕と蒼志様は似ています」

「ほんっと不本意だわ、それ!」

「安心してください。
僕も、誠に不本意です。
だから、蒼志様の考えが手に取るようによくわかるんです。
蒼志様がどうしようとするのか、どうしたいかが……!」

「フッ…
それなら、頼むわ!」
少し微笑み、河冨の肩に手を置く。

「はい、かしこまりました」
河冨も少し微笑み、蒼志に丁寧に頭を下げた。



待ち合わせの場所のレストランに着き、河冨が運転席から降りた。
「河冨、ありがとう!
また、終わったら連絡するね!」

「あ、お嬢様!
僕も、一度お店の中までお供させてください」

「え?うん」
二人は、店内に入る。

奥の席に、星那の高校の時からの友人・芽郁が座っていた。
「芽郁ちゃん!」

「星那~」
お互いに小さく手を振り微笑む。
そして星那は、河冨に向き直った。

「河冨、ここでいいよ?
ありがとう!」
微笑むと、河冨も微笑み星那の耳に口を寄せた。

「え……」
「もし……男性が来るようなことがあれば、すぐに僕にご連絡を━━━━━」
と耳打ちした。

そして丁寧に頭を下げ「ごゆっくり!」と店を後にした。
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