私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
その日の夜更け。
自室で河冨は、蒼志と連絡を取っていた。

「━━━━━━名前は、瀬渡 卓士。
お二人と同じ大学の二年です」

『ふーん。
芽郁のやつ、また俺の星那を傷つけやしねぇよなぁ?
…………つか!だいたいお前がいて、何やってんの!?』

「ですから!蒼志様にもお伝えしてるんですよ。
大学内では、僕はお供できないので。
それとも蒼志様が了承してくださるなら、喜んでお嬢様から片時も離れませんが!」

『はぁ!?ダメに決まってんだろ!?
お前、邪魔!!』

「でしたら、よろしくお願いします」


そして、次の日。
蒼志が、久瀬川邸に星那を迎えに来る。

「あーくん!おはよう~!」
パタパタと駆けてきて、両手を広げる蒼志に抱きついた。

「フフ…星那、おはよ!可愛い~可愛いなぁ~!」
頬をすり寄せ、抱き締める。

「フフフ…」
蒼志の腕の中から見上げ、微笑む星那。

「俺、星那が俺に向かってパタパタ駆けてきてくれんの、スゲー好き!!」
「フフ…私も、あーくんが両手を広げて待ってくれてるの見ると幸せだよ!」

二人が微笑み合っていると、河冨が「お嬢様、学校に遅れますよ?」と声をかけた。

「あ、うん。そうだね!」

「プッ…河冨、嫉妬?(笑)」

「は?」

「フフ…」
クスクス笑う、蒼志。

「“嫉妬心”なんて、とうの昔に越えてますが?」

「は?」

「蒼志様。
嫉妬心は、それを越えると不思議と何も感じなくなるんですよ?」

「………」

「今はただ、お嬢様を一秒でも長く目の中に入れておくことしか考えられません。
“嫉妬”と言っている時点で、蒼志様はまだまだですね……!」
少し微笑み、ドヤ顔で言った河冨。

「…………
……何故だ?
なんか、スッゲー負けた感がある。
俺の方が、優位なはずなのに……」
苦笑いをし、呟く蒼志。

「フフ…」
そんな二人を見て、星那がクスクスと笑う。

「お嬢様?」
「星那?なんだよ、笑うな!」

「ほんと、二人は仲良いね!」

「………」
「………」
「「…………は?」」
蒼志と河冨が、フリーズしている。

「お嬢様。何をおっしゃって……
これのどこが“仲良い”になるのですか?」
「そうだぞ!
気色わりぃよ、星那!」

「だって(笑)
二人はいつも言い合いをしてるけど、じゃれ合ってるみたいだよ?(笑)
何気に、意見が合ってるし!」

「「あり得ない」」

「フフ…ハモった(笑)」
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