私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
大学に向かう、車内━━━━━━

「あ!そうだ!あーくん」
蒼志と星那は、基本的にいつも手を繋いでいる。
その手を離し、星那は鞄をごそごそしだした。

「ん?どうした?」
蒼志は、覗き込み言う。

「じゃーーん!」
ランチバッグを蒼志に差し出した。

「え?」
「今日ね、お弁当作ってきたの~!
一緒に食べよ?」

「おっ!マジ!?ありがとう、星那!」
満面の笑みで言い、頭をポンポンと撫でた。

「フフ…
これから毎日作……はちょっと危ういけど、できる限り作るからね!」
頭を撫でられ、嬉しそうにはにかんだ星那。
蒼志に微笑んだのだった。


大学に着き、河冨がドアを開ける。
蒼志が出て、星那に手を差し出し星那も降りた。

そのまま手を繋いだ。

「お嬢様、行ってらっしゃいませ!」
微笑み頭を下げた河冨。

「河冨にもあるよ!」
頭を下げた河冨の頭の上から、星那の声が降ってくる。
バッと頭を上げた、河冨。
目を見開いていた。

「河冨のお部屋のドアにかけてるから、お昼に食べてね!
まだ修行中だから、味は補償できないけど……」
微笑み言った星那。

「お嬢…様━━━━━━」

━━━━━━!!!?

「え………」
「は?ちょっ…河冨…!!?」

━━━━━気づくと、星那は河冨の腕の中にいた。


「お嬢様…お嬢様……ありがとうございます…!
あぁ…貴女は、本当に……僕の最高の━━━━━」
そこで、グッと星那は蒼志に引き離された。

「河冨!!!
俺の星那に、勝手に触るな!!!」

「はっ!!?
も、申し訳ありません!!」
河冨も、無意識だったのだろう。
弾かれたように頭を下げ、蒼志と星那に謝罪する。

「う、ううん…」
「星那。行くぞ!」

星那の手を握りしめ、引っ張るように去っていった。

「……………お嬢様、ありがとうございます…
僕の最高の愛しい姫……!」
そう呟いて、足早に屋敷に帰るのだった。


「………ったく…やっぱ、警戒すべきは“河冨”の方じゃねぇか!」
呟きながら、ひたすら星那の手を引っ張っていく。

「あーくん!あーくん!」
「………」

「あーくん!足、早いよ!」
「………」

「それに、こっちは講義室の方じゃないよ!?」

人気のない所に連れてきた蒼志。
「ここでいいか……」
と呟き、星那を壁に追い詰めた。

「あーくん、どうし━━━━━━」
壁に両手をつき、額と額をくっつけた。

「星那、ここには誰も来ない。
━━━━━━━キスしよ?」


そして、星那の口唇を塞いだ。
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