私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
基本的に、星那の行くとこ行くとこには河冨が付いてくる。

それは、日々のデートもそうだ。
もちろんデート中、店の中までは入らないが、店の外でずっと待っている。

蒼志と星那が完全に二人っきりになれるのは、大学内か蒼志のマンション内ぐらいだ。

だから星那は、何かあると当然のように河冨を頼る。
それは河冨が、長年かけて積み重ねてきた信頼の賜物と言っていいだろう。

だからこそ蒼志は、早く星那と籍を入れ、自分だけのモノにしたいと考えているのだ。


大学が終わり、門に向かうと河冨の車が止まっている。
車の前には、河冨が規則正しく立っていて星那の存在を認めるとふわりと微笑んだ。

「お帰りなさいませ、お嬢様。
おデコ、見せてください」
丁寧に頭を下げ、優しく星那の前髪を上げる。

「もう、大丈夫だよ!」
「まだ…赤い…な……
もう一度、貼っておきましょう」
「大丈夫なのに…」

「━━━━━おい!」
冷えピタを貼ろうとする河冨から、冷えピタを奪うように取った蒼志。
「俺がやる」

「あ!ちょっ…蒼志様!?」

「星那、ジッとして?」
「もう大丈夫だよ?」
「ダーメ!」
優しく額に貼る。

「………ん…ありがと、あーくん!」
「ん!ほら、行こ?」

微笑み合う二人を見て河冨は、頭を横に振りドアを開ける。
「…………さぁ、どうぞ?」
「うん、ありがとう!」
そう言って、乗り込んだ。

「河冨、あんま気安く触んな!」
「は?」

「星那は、俺のなの!」

「“まだ”婚約者ではありませんよね?」

「はぁ!?」
グッと河冨に顔を近づける、蒼志。

「…………でも…わかってます」
そんな蒼志を、見据え言う。
その表情は、河冨とは思えない程切ない。

「え?」
蒼志も少し、たじろいだ。

「お嬢様が、蒼志様のプロポーズを受けないわけがない。
……………そんなことはわかってます」

「河冨…」

「でも、お嬢様は僕の大事な━━━━━」
「あーくん、河冨、まだー?」

その時、星那が顔を出してきた。

「あ、ごめんな!」
「お嬢様、すみません!」

蒼志と河冨は、急いで車に乗り込んだ。


そして、ジュエリーショップに向かった。
「━━━━わぁー、色々あるね!」
「そうだな。ここのモチーフは“星”が多いもんな!」

「綺麗…」
ガラスケースの中のアクセサリーに見入っている、星那。

“お嬢様は僕の大事な━━━━━”

「星那」
蒼志は、ガラスケースの中の様々な指輪に見入っている星那を後ろから抱き締めた。
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