私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
そしてこちらは、蒼志。

星那と同様に、ボーッとしていた。
女性社員が話しかけているようだが、全く耳に入ってこない。

星那を傷つけてしまった。
今頃泣いているかもしれない。



「━━━━━そう言えば、蒼志さんは婚約されたとか?」

「え?」

「ほら、久瀬川財閥のご令嬢の……星那さん!」

「はい」

「可愛らしい方よね~!」
「そうね!まさに、ザ・お姫様って感じよね!」

星那の話を聞きながら、思わず顔がほころぶ蒼志。

「「「━━━━!!?」」」
そんな蒼志を見て、社員達は目を見開いた。

「え?何ですか?」

「いや…星那さんのこと、本当に大好きなんですね……!」

「え?」

「だってさっきまで上の空だったのに、途端に笑顔になって雰囲気も柔らかくなったから!」


「…………
好きですよ、とっても……!」

そう言って微笑んだ蒼志の表情は、言葉にならない程に柔らかく甘い。
その表情を見れば、誰でもわかる。

星那への、深い愛情が。


「「「……/////」」」
「…………蒼志さん」

「え?」

「その表情(かお)、今後は星那さんの前だけにしなきゃダメですよ?」

「は?」

「私達は、蒼志さんに下心がないからいいけど……
女性を勘違いさせます」



それからパーティーは終わり、蒼志はマンションに帰った。
時計は、22時を過ぎている。

「星那、起きてるかな?」

【起きてる?】
星那にメッセージを送った。

既読にならない。

「寝てるか……
あんなことしちゃったもんなぁー」

明日、会って謝ろう。

そう思い、風呂場に向かった。



星那は、ソファに座ったままうたた寝をしていた。

星那の部屋にノックの音が響き、ドアがゆっくり開く。
河冨が星那の様子がおかしいことを心配して、入ってきたのだ。

「失礼いたします。
お嬢様、起きて━━━━━あ……」

河冨はフッ…微笑んで、静かに星那に近づいた。
足元に跪き、星那を見上げた。

「可愛い…/////」

思わず、星那の頬に触れた。
柔らかくて、スベスベする。

そのまま、親指で口唇をなぞった。
「………っ…/////」

頬に触れ、口唇をなぞっただけでドキドキする。

このまま、口唇を重ねることができたら……

そう思った時には既に━━━━━━




口唇を重ねていた。
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