私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
「おはよう!あーくん。
あ、メッセージ、気づかなくてごめんね!
いつの間にか、寝ちゃってて……」
星那も微笑み言う。

「ううん!
…………行こうか」
会ったらすぐに謝ろうと思っていた、蒼志。
しかし、星那の態度を見て躊躇してしまった。
蒼志は微笑み手を差し出す。
星那もその手をキュッと握った。


行きの車内。
いつも二人は基本的に星那が話し、蒼志は相づちをうちながら微笑み聞くことが多い。

“昨日のパーティーどうだった?”と聞きたい。

でも昨日の電話の段階で“楽しくない”と言っていた蒼志の口から、女性社員と話をして“楽しかった”と言われたら、また嫉妬してしまう。

星那は、その話題を避けて話を振った。
「あーくん」

「ん?」

「今度の同窓会のメール、来た?」

「ん?あー、大騎から」

「行こうね!」

「星那は行きてぇの?」

「うん。
久しぶりに、みんなに会いたいなって」

「みんなって……どのみんな?」

「え?」

「ダチ?それとも……」

「ん?」

「あ、いや。ううん。
星那が行くなら、俺も行く」

「うん!」

そして河冨は、そんな二人を見て複雑な思いを抱いていた。


大学に着き、二人が車を降りる。
「では、お嬢様、蒼志様。
行ってらっしゃいませ」

「うん!行ってきます!
河冨も、気をつけてね!」

「………」

「河冨?」
「どうした?」

「今日のお二人は、なんだか“他人”みたいですね」

「「え?」」

「“ただの”幼馴染みにしか見えない。
お二人は、婚約されたんですよね?
何を遠慮しているのですか?
お互いにお互いを狂おしいくらいに想い合っていて“嫌われる”なんてこと、本気であると思ってるんですか?」

「河冨…」
「お前…」

「昨晩、お二人の間に何があったかわかりません。
しかし“何があっても”お二人は、将来を誓い合った婚約者同士でしょ?」

「「━━━━━!!?」」

「…………お嬢様に、これを」

河冨から手渡された物━━━━火傷治療の塗り薬だ。
星那は受け取り、河冨を見上げた。

「ちゃんと、塗ってくださいね!」
意味深に言って、丁寧に頭を下げた。

「………うん、わかった!
“忘れずに塗るね”」
星那も微笑むのだった。


そして、蒼志に向き直った。
「あーくん。
講義室行く前に、お話したいな!」
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