私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
人気のあまりないベンチに並んで座る。

星那は、人がいないのを確認してスカートを捲り上げた。
「え……/////ちょっ…星那…!!?」

「見て、あーくん」

「え?どうした!?これ!」
星那の両膝が、薄く赤くなっていた。

「昨日の夜、紅茶を膝の上にこぼして火傷したの」

「はぁ!!?大丈夫!?河冨は何やってたんだよ!!?」

「違うよ。河冨は全然悪くないよ?」

「は?河冨は、星那の執事だぞ?
星那を傷つけるなんてあり得ねぇよ!!」


「━━━━━私を傷つけたのは、あーくんでしょ!!?」

声を荒らげる蒼志を制するように星那の声が響いた。

「━━━━━え……?」

「あーくんが、私の心を奪って閉じ込めて離してくれないから、嫉妬したの!!」

「星那…」

「わかってるよ?
これから一緒にお仕事していく社員さんだし、私が親睦を深めてって言ったからだし、でも、でも…私との電話を切ってからにしてよ!
私の知らないところでにして!
あーくんは、私のあーくんでしょ!?
あんなの、聞かされたら嫉妬するに決まってるでしょ!!?」

「星那、ごめ━━━━━」

「“信じてついてこい”って言うなら、嫉妬させないで!不安にさせないで!」
星那は、心の中の想いを吐き出すように言葉にしていた。

目が潤み、涙が溢れてくる。

そして一度吐き出してしまうと、タガが外れたように次々と言葉が出てくる。
「返してよ!!
あーくんが取ってった私の心、返して!
そしたらもう……こんな醜い嫉妬しなくて済むでしょ?」

「星那」
「返して!」
蒼志の服を掴み、訴えるように言葉をぶつける。

「星那!」
「返してよ!」

「━━━━━返さねぇよ!!!」
「………っ…」
蒼志は星那の手を掴み、顔を覗き込んだ。

「絶対、返さねぇ!!
俺の方が、星那を欲してんだから!
好きで、好きで、好きすぎるんだから!
絶対返さねぇよ……!
寧ろ、もっと頂戴!!
もっと、星那の心くれよ!
それで俺から離れられなくなって、俺しか見れなくなって、俺だけのモノになってよ!!?」
蒼志は、星那の頬を包み込んで声を荒らげた。


「……………あーくん、好き…」
漸く、落ち着きを取り戻し呟いた星那。

「うん。俺は、もっと好き!」
星那の目元をゆっくりなぞり、微笑んだ。

「こんな私、嫌いにならない?」

「ならない!
つか!なれない!」

「良かった…
嫌われるんじゃないかと思って言えなかったの……」

「うん。
俺の方こそ、ごめん!
星那に、嫉妬してほしくてあんなことしたんだ……!
もっと、もっと俺のこと好きになってほしくて……
嫉妬してほしかったからって、傷つけるようなことしてごめん!ごめんな!」

蒼志はそのまま星那を抱き締め、ゆっくり背中を撫でた。

星那も“うん。大好きだよ”と言って、蒼志にしがみついた。
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