私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
蒼志の声が、響いてくる。

岳玄「え……なんで?」

蒼志「岳玄!!お前…俺の星那に触るな!!」

タタタッと駆けてきて、岳玄を引き剥がし星那を抱き締める。
星那「あーくん!」

蒼志「星那、良かったぁー
やな予感したんだよなぁー
やっぱ、こいつ(岳玄)だった!」

星那「ほんとに、来てくれた!」

蒼志「当たり前だろ?(笑)
俺は星那が呼べば、何処へでも駆けつけるよ!
………つか!星那、約束!忘れたの?」

星那「うーごめん…
でも、元々はお手洗いに来たんだし…」
蒼志「わかってるよ?
…………ったく、こんなとこに連れてこられやがって!」

星那「………」
あっという間に目が潤み、星那は蒼志の胸に顔を埋めた。

蒼志「星那!!?まさか、こいつに他になんかやなことされたのか!!?」

星那「ううん。
やなことしたのは、私の方……」

蒼志「え?」


岳玄「━━━━━はっきり振られたの!僕」


蒼志「…………
………プッ…!ウケる~(笑)」
一瞬フリーズし、クスクス笑う蒼志。

岳玄「なのに!
“好きになってくれてありがとう”とか可愛く微笑んで言ってきたから、止められなかったの!」

蒼志「フフ…
星那は、ピュアだからな!(笑)
まぁ、同情はしてやる!」

岳玄「同情してくれるなら、星那とデートさせてよ!」

蒼志「は?お前、喧嘩売ってんの?」

岳玄「喧嘩を売ってきてたのは、蒼志の方でしょ!
高校ん時、毎回毎回……
ウザくて堪んなかった!」

蒼志「お前が、星那にくっついてたからだろ!」

岳玄「当たり前じゃん!
好きだったんだから!
…………てか!その時“ただの”幼馴染みだったよね?二人。
しかも一時期、蒼志は彼女いたよね?」

蒼志「は?あれは!!
……………色々あんだよ!!」

岳玄「は?色々って何?」

星那「ちょっ……二人とも!」

蒼志と岳玄が言い合いを始める。
星那は、背の高い二人に挟まれ身動きがとれない。

高校の時、いつもそうだった。

特に高校三年生になり、蒼志と星那が付き合うようになってからは、ほぼ毎日こんな感じ星那は二人に挟まれ言い合いを聞いていたのだ。

星那はとても懐かしくて、なぜか温かい気持ちになる。


星那「………」

蒼志「だからぁ!色々は色々………え?」
岳玄「星、那?」

星那「……っ…」
目が潤み、泣き笑いのようになっていた。

蒼志「星那!?」
岳玄「ごめんね!僕達、また言い合いを……」
蒼志「星那、ごめん!
………ったく…成長してねぇな…俺等(笑)」
岳玄「だね…(笑)」

星那「違うの……!
なんだか、懐かしいなって!」

蒼志・岳玄「星那…そうだね!」


三人は、微笑み合っていた。
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