私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
蒼志達がいる高校の門が、突然キーと金属音をさせ開いた━━━━━━

大騎「え?」
智久「門が……」
岳玄「開いてる…」

芽郁「な、なんか…」
「怖い……」

星那「あ、あーくん…」
蒼志「でも、なんで?」

すがり付く星那の腰を抱き、門の方を見つめる。

蒼志達の通っていた高校。
門を入り、坂を登ったところに校舎や運動場等がある。

蒼志達は、運動場の端にある石段にみんな腰かけて飲み食いしていた。
そのため、運動場から門が見えるのだ。


門が開ききると、黒塗りの高級車がゆっくり入ってきた。

星那「あ……」
蒼志「河冨の車だ」

車は坂を上がり、そのまま運動場に入ってくる。

そして、蒼志達のいる前でゆっくり止まった。


運転席から、河冨がスマートに出てくる。
河冨「━━━━お嬢様。
お時間をかなり過ぎています。
急いでお車にお乗りください」

真っ直ぐ、星那“だけを”見据えて言う。

星那「河冨、ごめんね!つい、楽しくて時間━━━━」
河冨「お嬢様。
僕は別に怒っていませんよ?
言いましたよね?
僕は、お嬢様に怒ったりしないと。
お嬢様には、常に優しく穏やかでありたいと」

星那「うん。
じゃあ、待って!お片付けを……」

河冨「よろしいのですか?」

星那「え?」

河冨「こうしてる間にも、時間は過ぎていくんですよ?
ドラマの世界ではないのだから、一時停止なんてない。
お父様とお母様、こうしてる今も“かなり”心配されてます。
僕が連絡はいれてますが、門限を破っているこの時点で、蒼志様との結婚の日が延びているんですよ?」

星那「あ…」

蒼志「は?」

河冨の言葉に、蒼志も反応する。

河冨「蒼志様、旦那様がおっしゃった“目に見える形”の意味をちゃんとわかってますか?」

蒼志「は?」

河冨「門限も守れない人間に、お嬢様を渡すとお思いで?
門限が守れない=時間を守れない。
旦那様のような方が、そんな人間を信用するとは思えない。
貴方は、恋人ではなく“婚約者”なんですよ?
もっと、日々緊張感を持って生活しないと、お嬢様を手に入れることはできませんよ!」


大騎「王子。ここはいいから、姫様と一緒に行け!」
智久「ちゃんと、姫様の両親に謝罪しないと!」

岳玄「星那も!早く!」
芽郁「星那!」

他の同級生達も、大きく頷いている。


蒼志と星那も、大きく頷き「ごめん」と言って河冨の車に乗り込んだ。
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