私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
「━━━━━━あ!やっぱ、蒼くんだ!」

「は?咲恵?」

「何してるの?」
そう言って、見上げてくる。

「大騎を待ってる」

「そうなんだ!星那ちゃんは?」

「は?星那は、帰った」

「そっか!」
何故かニコニコしている、咲恵。

「………」
「………」

「あのさ」
「え?」

「帰れよ」
「え?」

「何しに来たか知らねぇけど、用がないだろ?」

「………相変わらず、冷たいね」

「そうか?」

「え?」

「中途半端に優しくする方が、冷たいと思う。俺は」

「そうかもだけど……」

「確かに俺は、特定の人間にしか情を持てない。
だからって情もないのに、気遣ったりするのは違うと思う」

「…………そうだね」

「………」

「………………でも、星那ちゃんはいいなぁー」

「は?」

「蒼くんにあんなに愛されて……!」

「………」

「代わってほしい…私と……」

「無理だろ?それ」

「フフ…わかってるわよ(笑)」

「いや、そうじゃない」
「え?」


「なんで、そんな風に思うの?
なんで、星那以上の女になって見返そうと思わねぇの?」

「え……」

「俺なら……そいつ以上の男になって、逆に羨ましがられるように努力する。
考えたくもねぇけど、もし星那に振られたら……
また振り向かせるように、努力して“また”告って来てもらうようにする。
どっちにしても、嫉妬するだけでは終わらせない。
俺が“無理だろ”って言ったのは、咲恵のその“考え方に”だ。
そんなんだから、お前は好かれないんだよ……!」

「………」
口をつぐんでしまった、咲恵。

「……つか!大騎、まだかよ!?」
スマホを取り出す蒼志。

「━━━━もしもし?大騎、まだ!?
…………はぁ!!?ふざけんなよ!?
だったらもっと、星那といれたのに!
………ちょっ…大騎!!
━━━━━━切りやがった……!」

「ど、どうしたの?」
「ドタキャン!!
…………ったく…あのバカ大騎!
今度会ったら、しばいてやる!」

「…………だ、だったら!!」

「あ?」

「一緒に食事しない?」

「はぁ!!?やだ!」

「これで最後にするから!お願い!」

「帰る」

懇願する咲恵を無視して、帰路につく蒼志。
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