私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
しかし、咲恵が後をついてくる。

「………」
「蒼くん!」

「………」
「蒼くん、お願い!」

「………」
「今日だけでいいから!」

「………」
「………」

「………」
「………」

「………」
「………」

ピタッと止まる、蒼志。
振り返り、咲恵を睨み付ける。

「何処までついてくんの?」

「何処まででも」

「………」
「………」

「………はぁー、わかった!
その代わり、今日だけ!飯食うだけだから!
後、一つ約束しろ!」

「何?」

「もう二度と、俺の前に現れるな。
言うまでもないが、星那の前にも」

「………わかった」


駅まで戻る。
「━━━━━で?何食いたいの?」

「何でも!」

「は?」

「“何でも”は受け付けない」

「なんで?」

「だって“何でも”じゃねぇだろ?」

「じゃあ……そこのパスタ」
キョロキョロして、目についた店を指差した。

「ん」


店に入り、注目する。
料理が来るまでの間、沈黙が続く。

「………」
「………」

「………」
「………」

咲恵は話したいことがあるが、蒼志の機嫌がかなり悪く話しかけられない。

「………星那ちゃんはさ」
「あ?」

「星那ちゃんとは、デートどんなとこに行ってるの?」

星那の話題なら、答えてくれるだろう。
どんな内容でも、蒼志と会話がしたい。

咲恵は、そんな思いで話しかける。

「何処ってのはない。
駅ビルうろうろしたり、公園に行ったり…
なんか、色々」

「へぇー!
でもさ!
星那ちゃんと外食する時はどんな風に決めてるの?
蒼くんのことだから、星那ちゃんにはさっきみたいな言い方しないんでしょ?」

「………」
「蒼くん?」

「星那は“何でも”っつったら、本当に何処でも反対しない。
それに星那は、食べたいもんはちゃんと言ってくれる。
“~~行きたいな”とか“~~食べたい”とか、ちゃんと言ってくる。
お前等みたいな女と一緒にすんな!」

「そっか…!」


食事が終わり、会計をする。

「自分の分くらい自分で……」
“一緒で”と言って、金を出そうとしている蒼志に慌てたように声をかける。

「━━━━━あのさ!」

「え?」

「正直今すぐにでも帰りてぇし、めっちゃめんどくせぇけど、やることはちゃんとやる。
女に払わせるかよ!」

「あ、うん…ありがとう!ごちそうさま」


そして二人は、外に出た。
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