私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
河冨が、ゆっくり目を開ける。

「暑い……」
かなり汗をかいていて、掛け布団を剥がした。

凄く頭も身体もすっきりしていて、軽くなったような感じだ。

熱も平熱まで下がっていて、河冨は部屋の備え付けのシャワールームへ向かった。

シャワーを浴びて身体を綺麗に洗い流し、いつものスーツに着替え身だしなみを整える。


そして━━━━━星那の部屋へ向かった。



ノックをして、中に入る。

室内の光景に、すっきりしていた頭がまた沸騰しそうに熱くなった。

言わずもがな……ベッドで蒼志に抱かれ、星那が眠っていたからだ。

今すぐにでも、蒼志から星那を引き剥がしこの腕の中に閉じ込めてしまいたい衝動が沸き上がる━━━━━

つい先程まで……自分だけのお嬢様だったのに、現実を突きつけられたような感覚だ。

河冨は星那の部屋を後にし、自室に戻った。
着ていたスーツから、スウェットに着替え冷えピタを額に貼り、ベッドに横になった。

そして、星那がまた様子を見に来てくれるのを待つことにしたのだ。

待つのは、嫌いじゃない━━━━━━

星那が来てくれると思うだけで、何分でも何時間でも待てる。

どんな表情(かお)をして、来てくれるのだろうか。
どんな言葉を、かけてきてくれるのかな?

まだ治っていないフリをしよう。

今日くらい、星那を独り占めしてもバチは当たらないだろう。

そう考えるだけで、幸せな気持ちになり顔がにやけていた。



一方の蒼志と星那。

「ん…」
ゆっくり星那が目を覚ました。

「やっと起きた!」
蒼志は既に起きていて、星那の頬をツンツンとつついた。
「………」
目をパチパチして、蒼志を見上げる。

「星那ー?」
「あれ?」

「ん?」
「あーくんがいる」

「うん、あーくんいますよ?(笑)」
クスクス笑って、星那の額に額をくっつけた。

「じゃあ、さっきの夢?」
「ん?
うーん、ずっと寝てたからな。
夢だろうな!」

「なんだ…夢か……良かっ…た」
安心したように呟いて、蒼志に抱きついた。

「ん?星那?」
「あーくんが、バイバイって離れていく夢見たの…
私が頼りないから、あーくんが呆れたの」

「そっか……
大丈夫!俺は、ここにいるよ!
絶対!離れねぇよ!」

ゆっくり頭を撫でる蒼志に、星那も微笑んだ。
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