私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
その日の夜更け。

ずっと部屋にこもっていた河冨。
明日から、また“いつものように”星那に捨てられないように努めなければ………!

「よし!」
河冨は、気合いをいれ一度シャワーを浴びるためシャワールームに向かった。

シャワーから出て、ベッドに入る。
全く眠くないが、横になっていれば次第に寝るだろう。

そう思い、ボーッと天井を見つめていた。


シンと静まり返った部屋に、遠慮がちにノックの音が響く。
そして、静かにドアが開いた。

「河冨、起きてる?」
星那の小さな声が聞こえてきた。

「え!?お嬢様!?」
ガバッと起き上がる。

「あ!ごめんね!起こしたかな?」

「いえ!まだ寝てなかったので、大丈夫ですよ!」
部屋の電気をつけると、ネグリジェを着た星那がドア前に立っていた。

「少し、お話いい?」
「はい!もちろんです!
…………こちらへどうぞ?お嬢様」

星那を小さな一人用ソファに促し、足元に跪いた。

「河冨、体調は?」
「もう、大丈夫ですよ!
お嬢様のおかげで、すっかり元気です!」

「そっか!良かったぁ~!」
微笑み言った河冨に、星那も安心したように微笑んだ。
そして真剣な表情(かお)になり、河冨を真っ直ぐ見下ろした。

「お嬢様?」

「河冨」

「はい」

「河冨は、河冨の幸せを考えて?」

「え……」

「もう…私のために、自分を削らないで?」

「どう…して、そんなことを……?」

「今回の風邪、私をお外で待ってたからでしょ?
河冨は、いつも私のために自分を犠牲にして色んなことをしてくれてる。
だから私は、河冨がいてくれるととても安心する。
このままじゃ……ほんとに、河冨にばかり頼ってしまう。
でも私は、結婚するでしょ?
パパも言ったように、河冨がいなくても自分の足で立てるようにならないと!」

「お嬢様、しかし………」

「私は、河冨に幸せになってほしい!
河冨は、私の家族だから!
話はそれだけ!
じゃあ……おやすみなさい!」

立ち上がり、ドアに向かう星那。

河冨は跪いたまま、俯いていた。

星那がドアを開けようと、ノブに手を掛けた。


━━━━━━!!!!

バッと立ち上がり、星那を追いかけた河冨。
そして、後ろから抱き締めたのだ。
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