私の恋人と執事はいつもいがみ合っている
「え……河…冨?」


「僕の幸せを望むなら、僕のモノになってください」

「え……」

「僕の望みは、蒼志様と同じようにお嬢様に触れる、抱き締める、キスをする、抱く……それが当たり前のように許されることです」

「河冨…何、言って………」

「…………僕は、お嬢様が好きです。
いや、好きなんてそんな生易しい気持ちじゃない。
お嬢様を愛してます。
ずっと………貴女だけを想ってきました」

「河冨…」

ゆっくり、星那を自分に向かせる。

「でも、大丈夫ですよ?
お嬢様が、蒼志様をどれ程想っているかを知っています。
だから“僕のモノになってほしい”って想いはあくまでも僕の叶わない願いです。
お嬢様。
せめて、お傍にいさせていただけませんか?
貴女のお傍にいられることが、今の僕の幸せです!」

星那に目線を合わせ、語りかけるように話す。
そしてコツンと額をくっつけた。

「…………わかった」
「はい!ありがとうございます!」

嬉しそうに笑う、河冨。


「………」
どうして河冨は、こんな嬉しそうに笑えるのだろう。

「お嬢様、お部屋までお送りします。
早くお休みにならないと、明日学校ですよ?」
「………うん」

部屋に着き、一緒に中に入る。

「では、お嬢様。
おやすみなさいませ」
ベッドに寝かせて、頭をポンポンと撫でた河冨。
微笑んで言う。

「………」

「ん?お嬢様?」

「……どうして、そんなに笑っていられるの?」

「え?」

「私だったら、苦しい……!
あーくんが手に入らないなら、傍にいたくない!」

「お嬢様…」

「なのに、どうして河冨は笑っていられるの?」

「苦しいですよ?」

「だったら、どうして?」

「お嬢様と離れることの方が、苦痛だからです」

「え?」

「お嬢様が手に入らないことよりも、お嬢様と離れることの方が僕にとって苦痛です。
だから、どんな形でもお傍にいたいんです」

「………」

「本当のこと言うと、大学内や蒼志様とのデート中でもお供したいくらいです」

「河冨…」

「……………僕はもう……
お嬢様なしでは、生きていけなくなりました。
お嬢様だけが、僕に命を与えてくれる。
お嬢様が僕に笑いかけてくれること。
僕への“今から帰るね!”ってメッセージ。
お嬢様の作るお弁当。
僕に向かって少し小走りに向かってくる、あの愛くるしさも………
それが、僕の生きる証なんです!」


河冨の言葉が、星那の心に響いていた。
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