不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
部員のみんなは一旦全員手を止めて、大慌てで律くんの元へ駆け寄る。
一番恐れていたことが起こった。
普段からしっかりしている律くんが、こんなふうに何度も転んだり壁にぶつかったりしたところを今まで一度も見たことがない。
大きく目を見開いて驚きながら、ふと頭を過ぎったのは“伊都ちゃんの不幸体質、俺に移っちゃえばいいのにね”と言った彼のあの言葉。
そんなワケない、これはただの勘違いだよと必死に言い聞かせているのに、《もしかしたら》だなんてタラレバなことを考えていたらもうダメだった。
律くんが、危ない。