不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
それから私は、とにかく律くんを避け続けた。
不自然じゃないように、それとなく、そっと。
もうあと1ヶ月ほどでウィンターカップが始まってしまう。
律くんはきっと追い込み時期に入っているだろうから余計に、会う回数は意識していなくても少なくなっていた。
あれ以来、もう怪我はしていないかな。
風邪が流行っているから元気だといいけれど。
いつものように第1食堂で真実ちゃんと一緒にお弁当を広げながら、律くんのことを思った。その矢先。
「――伊都ちゃん、発見」
「え?」
「お友達ちゃんごめんね。ちょっとだけ伊都ちゃん借りてもいい?」
「い、一宮くん!うんいいよ!どーぞどーぞ!」
うしろから突然、グッと肩を抱きかかえながら私の耳元でそう言ったのはもう、顔を見たくなって分かる……律くんだった。
上手に手を取って「おいで」という彼の、その顔を見ることができない。
せめて大事な試合が終わるまでは、近寄れない。