不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
だからせめて、胸のうちだけで留めておきたかった。
だけど私の手を握ったまま、律くんは少しだけキュッと力を込めてその返事を待つ。
「だって律くん。最近不運が続いているように見えたので、それがもし私と頻繁に一緒にいるせいで不幸体質が移ってしまったんじゃないかと思ったら……怖くて」
「……うん、それで?」
「それで、せめて大切な試合が終わるまではなるべく関わらないでおこうと、思って」
「伊都ちゃん応援してくれるって言ったのに?」
「も、もちろん応援はします!律くんを守るために離れて見守ろうかと……!」
その瞬間、掴まれていた右手をグッと引き寄せられて、私の身体は流されるように律くんの腕の中にスッポリと収まる。
「わっ」と声が出たときにはもう抱き締められているということを理解して、顔はまた一気に熱を持ちながら真っ赤に染まった。