不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「り、律くん!?」
「伊都ちゃん俺のこと守ってくれるの?」
「ま、守りますとも!だからこうして距離を置こうと……」
「でも遠く離れたままで守れる?」
「え?」
「本当に俺を守ってくれるなら、一番近くにいてくれなきゃ」
律くんの声が、籠って私の耳に届く。
“一番近くにいてくれなきゃ”
その言葉を聞いた途端、彼から離れようと抵抗していた力はみんなどこかへ散ってしまった。
律くんが言った言葉の1つ1つを噛み砕くように吸収して、『近くにいてもいい』と言われたことに緊張とはまた違った胸の高鳴りがドクンと1回大きな音を立てた。
「言ったでしょ?伊都ちゃんがこうして傍にいてくれることが何より俺にとっての幸運だって」
「……っ!」
「だって10年ぶりの再会だよ?言っとくけどこの幸運はそこら辺の不幸なんかじゃ絶対に倒せないからね?」
「……っ」
「だから離れて見守る、なんて言わずにもっと近くで応援してよ」
「律、くん」
「もう、あのときみたいに急にいなくなったりしないで。伊都ちゃん」