不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
《――それでは終業式の前に、まずは男子バスケットボール部の壮行式を行います。全員、起立》
そして今、律くんたちバスケ部のみなさんは、全校生徒の前に立って見事、ウィンターカップ全国大会への切符を取ったことを報告している真っ最中だ。
キャプテンの瀬戸先輩とエースの律くんが、ステージに上がってマイク越しに話している姿はとても堂々としていて素敵だなと思う。
この学校で同じくらいの人気を誇る2人が揃って檀上にいるせいか、校長先生が話をしていた時とは打って変わって、至るところから2人の名前を呼ぶ甲高い声がこだました。
律くんは、今日も素晴らしく人気だ。
「瀬戸先輩、壮行式お疲れ様でした。この椅子、もう片付けちゃいますね!」
「おぉ、南野か。ありがとう助かる。俺ちょっとこのあと部活のことで抜けるから」
「あ、じゃあその点検表も預かりますよ?」
「そうだな、すまん!全部終わったらバスケ部の更衣室に投げとけばいいから」
「分かりました。じゃあコレ記入しておきますね」