不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
ガシャンッ、と瀬戸先輩から預かった点検票のバインダーがスルリと手から滑り落ちる。
ピタリと止まってしまった足はこれ以上動かなくなって、それを見た律くんはクスッと笑いながら「先に椅子だけ片付けてくるね」と言って私の元を去って行った。
「い、一緒に……?」
資料準備室の前で律くんと手を重ね合わせたあの日から、私は変に彼を意識してしまっているような気がしてならない。
荒くなった呼吸を正しく戻して、律くんが戻ってくる頃には必死に冷静を装った。
「……で、さっきの続きだけど」
「わ、私は大丈夫です!でも律くん部活の方は平気ですか?」
「うん、全然問題ないよ。じゃあHR終わったら昇降口のところに集合でいいかな?」
「分かりました。なるべく早く終わるように努めますね!」
「うん、俺も。わー、めちゃくちゃ楽しみになってきた」