不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
* * * *
「じゃあ伊都ちゃん!よいお年を!」
「はい、真実ちゃんもよいお年を!」
「ウィンターカップ近くなったらまた連絡するね!」
「お弁当はこちらで用意しますね!」
「わぁ、やったー!伊都ちゃんのお弁当って本当美味しいんだよねー!楽しみにしてるね!じゃあまた!」
今年最後のHRもどうにか時間どおりに終わり、先生や友達に手を振りながら急ぎ足で律くんと約束している昇降口へ向かう。
階段を1段ずつ降りるその度に、身体がふわふわと浮ついていくのが分かった。
だけどしっかりと、ドキドキと理由の付けられない何かが私を余計に突き動かしていく。
そして軽快に1階の踊り場までたどり着いた、そのとき。
「――中学の頃からずっと、一宮くんのバスケを応援していました!」
「!?」
「それで、いつの間にか……っ、好きになっていました。この高校を選んだのも、一宮くんが進学するっていう噂を聞いたからなんです。ずっとずっと好きでした!なので、よかったら私と付き合ってください!」
まさかのタイミング、私は慌てて壁に凭れるように隠れて身を潜めた。
こ、告白現場だ!
「……」
律くんはすごい人だ。
バスケが上手で、熱心で、みんなに優しくて、明るい。
私が律くんになれたらきっと、みんなに自慢しちゃうくらいにたくさんのモノを持ち合わせている。
私にはないモノを、彼はたくさん持っている。