不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
当時の記憶が曖昧なのは、お父さんが亡くなったことによるショックで精神的なストレスが過度に重なっているせいだ、と診断されている。
毎日多忙だったお父さんとの一番の思い出がきっと、あのクラブでバスケの練習していたときだったから、私は寂しさから逃れるためにその大切な思い出に蓋をしてしまったみたいだ。
でもその思い出の中には、律くんもいる。
律くんが覚えていてくれているというそれら全部、私は丸ごと閉ざしたまま。
「伊都ちゃんさ、これから毎月ラボあげようか?」
「え!?ど、どういうことですか?」
「ラボの編集さん、毎月見本誌を3冊くらい送ってくれるんだよね。でも俺もさすがに1冊あれば充分だから、伊都ちゃんがもらってくれると助かるなって」
「ほ、本当に私がいただいてもいいモノなんでしょうか?」
「うん、ぜひもらってよ。来月から伊都ちゃんにあげるね」
「わぁ、ありがとうございます!」
「よし!じゃあ次はちょっと俺の買い物に付き合ってくれない?」