不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。





「あ、そうだ真実ちゃんは一宮 律……さんのことを知っていますか?」


何気なく聞いたその質問に、真実ちゃんは目を輝かせながら「よくぞ聞いてくれました!」と言って、息つく暇もなく次々と情報を提供してくれた。





一宮くんは、小学生の頃からバスケのチームに所属していたらしく、弱小だったチームを大一番の大会で優勝まで導いただとか、今回8月に行われたインターハイでも危なげなく全国優勝まで進んだ立役者だとか、今も国体の選抜メンバーに選ばれているだとか。





あの彼がとんでもなくすごい人だってことは十分に理解した。



真実ちゃんが付き合っている彼氏がウチのバスケ部員だからなのか、その手の情報は誰よりも持っている。


何より2年生でレギュラー入りして頑張っている彼氏を応援するのが一番の楽しみだとも言っていた。











「……すごい」



家に帰って、真実ちゃんに貸してもらったスポーツ雑誌を1ページずつ捲りながら、まるでアイドルのような特集ページを見て出てきた言葉は本音だった。




特に一宮くんは一面を飾るほど大きく載っていて、今日のお昼休みにこんな大物人物からお金を借りたのかと思い返せば夢のようにさえ思う。


けれどこんなにも有名人なのに、普段は私達と同じ学校で授業を受けていることが何だか不思議でたまらなかった。





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