不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。




「……今のすごいね。見事なスライディングだったよ」


「へ?あ、えっと……」


「はい、じゃあ今のはノーカンね?最後どっちがボール触ったか覚えてる?」




掴まれていた手をスッと離して、一宮くんは試合中だった選手達の間に入って仕切り直してくれている。


腰に力が入らなくなった私は、その場に座り込むのが精一杯だった。





「あー、あたし最後に触った……ってか、めっちゃビックリした。南野さん大丈夫?」


「ホントそれ、今ベンチに直撃してなかった?」


「ぜ、全然大丈夫です!本当にすみませんでした!」


「そう?ならいいけど、一応保健室行ったほうがいいよ?」




みんなの優しい言葉に、思わず涙が溢れそうになる。




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