不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「──諭吉ちゃんさ、もしかして悪霊とか憑いてんじゃない?」
「あ、悪霊!?」
「ねぇ、キミ大丈夫か?さっきのスライディング俺らにも教えてよ!」
「え!?」
「ってかもしかして腰抜かしてる?え、マジ!?」
「……」
「こういうっ、人の不幸は……っ、笑っちゃいけねぇって言うけど俺っ、もう限界!クッソ腹いてぇ!笑えるわ!試合してるコートの中にあの滑り込みはヤバいだろ!」
一宮くんのおかげで何とか試合が再開されて、安堵した拍子に力が抜けて立てないことは事実だけれど、それをバスケ部のみなさんに囲まれながら笑い飛ばされるこの状況。
「(な、泣きたい……)」
「ねぇ諭吉ちゃん、保健室行かなきゃね」
「あ、そ、そうですね……。行ってきます」
イテテッと腰を抑えながらゆっくりと立ち上がる姿に、バスケ部全員が「バァさんだ!」と言いながら再び大笑いしていたけれど、先ほどのハプニングに手助けをしてくれた人達ばかりだから何も言わないでおいた。