不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「1人で行けんの?」
「わっ!一宮……くん、どうしてここに?」
体育館を出てすぐ、保健室に向う私を追って声をかけてくれたのは、今日も三度目の一宮くんだった。
緊張が解けたせいか、盛大に擦り剝いた足とベンチに直撃したおでこがかなり痛んできたみたいだ。
「諭吉ちゃんが心配になってね。また盛大に転んだりしたら危ないでしょ?」
「ご心配おかけしちゃってすみません。でも大丈夫です、よくあることなので!」
「え、諭吉ちゃんあんなことがよく起きるの?それさ、やっぱ悪霊の仕業と思うんだよね俺。あとでちゃんと有名なお寺調べなね?」
「お寺……」
一宮くんはそう言って、私の痛む足のほうへやって来て、肩を支えてくれる。
「へ!?ちょっ、一宮くん!?」
そして空いているもう片方の手で自身の携帯を取り出して、「つーかもう怖いから今から調べてあげる」と言って真剣な眼差しで画面をタップしていく。
が、極端に密着している一宮くんとの距離に落ち着かない私は、ソワソワと冷や汗を流す他ない。
「あ、あのっ、本当に平気なのでここからは1人で行けます!」
「……ほんとに?」
「ほ、ほんとに」
「ほんとのほんとに?」
「……ほんとの、ほんとに」