不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。










夕夏さんに対して思っていたことは、敢えて言わないでおいた。


きっと私が何を言っても、慰めることはできないと悟ったから。







「ありがとう……っ、南野さん」


荷物を持ち直して、「先に行きますね」と言ってバス乗り場へ向かう途中、うしろから小さく潤んだ声で夕夏さんは言った。


「律を、お願いします」と。




その言葉に私は何故か泣きそうになりながら、それでもグッと堪えて前を向いて会場の扉を大きく開けた。




夕焼け空がきれいな、12月も終わりの空だった。




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