不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
私を腕の中に閉じ込めて、手を休めることなく慰めるように頭を撫でながら律くんは言った。
「あの時は伊都ちゃんの方が身長も高くて、同い年なのに俺よりもずっとしっかりしていて、バスケが上手だったキミに……恋したんだよ。一目惚れ、っていうのかな。
それまでの俺はクラブの中でも一番年下で、俺より上手い人ばっかりで、練習が嫌になっていた時に南野選手が言ってくれたの。
“自分が頑張れる源を見つければいい”ってね。
その時最初に思いついたのが、伊都ちゃんの顔だった。
そういえば伊都ちゃんは、いつもシュートを決めたら喜んでくれて、パス回しが良かったら褒めてくれて、リバウンドを取ったらグーサインをくれてたなって。
それを南野選手に言ったらね?
“伊都はそんなに簡単にあげるわけにはいかないなー”って言われたから。
だから約束したんだよ。
じゃあ俺が南野選手よりも強くなれたら、伊都ちゃんくださいって。
そしたら“俺より強くなれたら、安心して伊都を任せられるな”ってね」