不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。







ほんの少しの距離を取って、私と視線を合わせる律くんは「納得できた?」と問うように笑ってそう言った。




本当は海外になんて行ってほしくないけれど、律くんはきっと、これからの将来何度も海を渡っていくのだと思う。

そのくらい、彼は優れた選手だから。




それを私自身も分かっていて、だから引き留めることもままならなくて、そんな葛藤をしながら浮かない顔をしている私に、律くんはパサッと何かを私の肩に掛けた。





「え、これ……」


「俺が帰ってくるときまで、伊都ちゃんにコレを託すね」


「え!?」


「章栄高校のエースナンバー7番ジャージ。帰国したら受け取りに行くからさ。それまで伊都ちゃんが預かっててくれない?」





律くんはゆっくりと私にそれを着せて、ファスナーを上げていく。


手が隠れるくらいぶかぶかのそれに包まれた瞬間、律くんの匂いに満たされた。




律くんが背負っている、このエースナンバー。


この背番号の名に恥じないよう、律くんが歩んだ道。これから歩むべき道。



それはとても重く感じられた。





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