不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。









「不謹慎かもしれないけど、伊都ちゃんの涙が見られてよかった」


「私……っ、幸せですっ」


「その言葉が聞けて、俺も今幸せです」


「律くんのこと……っ、信じて待ってます」





――だから、どうか。


無事に私のところへ帰ってきてください。



懇願する想いを、言葉にしない代わりに祈るように捧げた。







「うん、待っててね。帰ってきたら今度は伊都ちゃんがそのジャージを俺に着させてね」




それから私たちはたくさんのことを話した。


マネージャー用品をたくさん購入してくれたことのお礼、冬休み中に律くんを避けていたのは、私が勝手に夕夏さんと律くんの関係を誤解してしまっていたということにして謝った。



そして律くんも私に言った。


悠太くんという幼なじみの存在に密かに嫉妬していたこと、私のドジを瑠衣くんが助けたと聞いて闘争心に火が付いたこと、加奈子ちゃんや由香ちゃんに本当の幼なじみは自分だってことを強調してしまった、とも。





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