不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「俺、伊都ちゃんを前にするとすごい子供っぽくなるんだって学んだよ」
「り、律くんは子供っぽくなんかないですよ!いつも、すごく格好いい……」
「伊都ちゃんによく思われたくて必死ですから」
どのくらい時間が経っただろう。
教室の窓から差し込む日差しは、すっかり夕焼け空の色をしていた。
暖房もオフにされているここはすごく冷たいはずなのに、私の身体はいつまでも温かかい。
「伊都ちゃん。俺、伊都ちゃんのことが―――んんっ!?」
「り、律くん!ス、ストップです!」
「んんん!?」
律くんが言おうとした言葉を、大慌てで両手で塞いだ。
が、勢いあまってそのまま彼を押し倒してしまっていたことに気付いた私は、顏を真っ赤にして迅速に退けようと身体を反らせると、今度は律くんが私の腕を引いて待ったをかける。
私、なんてことを……!