不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「伊都ちゃんってばたまにすっごい大胆になるから、それ実は計算なんじゃない?って思うときがあるんだけど」
「ち、違います!計算じゃないです!本当にごめんなさい!今すぐ退けるので、あの!」
「うん知ってる。伊都ちゃんはきっと無自覚でやってる」
「あ、あの、腕を……」
「――だから俺がいない間、他の人が伊都ちゃんのこの魅力に気付いて奪われないかって……心配になったりすんの、俺」
「律くんっ」
「伊都ちゃんを前にすると、全然格好つけらんないんだけどね」
上半身を起こして、先ほどとは比べものにならないくらいの強い力で私を抱き寄せた律くんは、敢えて自身の表情を私に見せないようにギュッと私の肩に埋もれながら言う。
そんなこと、全然ないのに。
小さいころの約束を果たすために、自分の出世や名誉を捨ててまで1つの可能性にかけて私を探しに来てくれて。
私のために1人違う場所で戦い続けて、こうして実際に見つけ出してくれる人が他にどこにいるだろう。
きっと私のためにここまでしてくれる人は、後にも先にも律くんだけだ。
私も、彼に何か恩返しがしたい。
だからまずは、なんとしても――。