不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。








「……代わってやろうか?」


「い、いえそんな!大丈夫です!委員長は部活もありますし、私はもう点検のプロフェッショナルなのでシャッと点検してシャッと用紙を持っていきますね!」





体育委員の委員長はバスケ部のキャプテンでもある。


先週の月曜日に行われた表彰式では、県を背負って出場する国体のメンバーにも選ばれていて、全国2位という成績を収めて大きなトロフィーを掲げていたことを思い出す。




そこには確か、律くんもいた。


話が長いと有名な校長先生曰く、我が校から4人も選抜メンバーとして出場したことは大変な名誉である……と言ってすごく褒め称えていたけれど、あの時の律くんはどこか悔しそうで、そして寂しそうだった。






「では、行ってきます」


「転ぶなよ」


「は、はい!」





校舎から1番遠い第3体育館。


ここは放課後バスケ部専用の体育館になっているはずだから、邪魔をしないようにこっそりと扉を開けて潜入する。




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