不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
* * * *
律くんがいない1週間は、今までの1週間の中で一番と言っても過言ではないくらい、毎日の進み具合が遅く感じられた。
その間、私はとにかく気を紛らわせるかのようにたくさんのことを真摯にやり遂げていった。
体育委員の仕事に、球技大会の準備、家の掃除にお母さんのお店の手伝いまで、全て。
そして、今日はその中でもダントツで気合を入れなければならない日になる。
何回も深呼吸をして、今度こそとなりに住む悠太くん家のインターフォンを押すぞと意気込んだ、そのとき。
「伊都、お前ソレ軽く不審者だぞ」
「え、え!?は、悠太くん!?い、いつから……!」
「ずっと、だな。伊都がインターフォン押そうとしてやめて、深呼吸をしまくってる姿全部ここ2階から丸見え」
「きゃー!も、もっと早く声かけてよ……っ!」
「ハハッ。今行くから、ちょっと待ってて」
「う、うん」
今日こそ、悠太くんと話しをしなければならない。
本当は今にも胸の奥で閊える不安が顏を出してきそうで、怖くなるけれど。
「……ん。あがる?」
「うん。あのね、実は悠太くんに話があって」
「いいけど……お前顏赤いよ?どうした?」
「……え?」