不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
――ピピピッとなった体温計は、38.2度と書かれていた。
やってしまった。
風邪なんてもう何年も引いていなかったのに、どうして今、このタイミングなんだろう。
今年も私はことごとくツイていない。
「ご、ごめんね。結局私の家に来てもらうことになっちゃって」
「いいから、寝てて」
「う、移ったらダメだから悠太くんはもう戻って?」
「――いいよ。伊都をこうやって看病するの、多分これが最後になるんだろうし」
「……!」
悠太くんはもう、分かっている。
表情1つ変えずに言ったその言葉で、理解してしまった。
それでも私は、布団に潜りながら悠太くんが少しでも傷付かないような言い回しを考える。
どうしたって、これから私は彼を傷つけてしまうというのに。
「いいよ、伊都。お前が出した答え、聞かせて」
「……っ」
「ゆっくりで、いいから」