不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
「引っ込み思案が改善されたのも、友達がたくさんできたのも、全部悠太くんのおかげで……っ。だから、そんな悠太くんの気持ちに応えられないことが申し訳なくて、悔しくてっ」
どこまでも自分勝手な私は、心の中でずっと“悠太くんを失いたくない”“悠太くんとこれからも一緒にいたい”を繰り返した。
途端、またもや突然流れ出てきた涙は……今度は冷たかった。
一度取り戻した涙は、今出てこなくていいのに、という場面でもお構いなく流れ溢れる。
急いでそれを雑に袖で拭う。
涙のせいで拍車をかけるように震えはじめる声も、極力抑えて大きくゆっくりと息を吸って整えた。
「伊都の泣いてる姿、俺初めてみたよ」
「へ?」
「なんでこの子は何があっても泣かないんだろうって、ずっと思ってた」
「前に、お父さんのことは悠太くんに伝えたと思うんだけど……ね?そのときに私、一部の記憶を失くしたときに一緒に泣くこともできなくなって」
「――でもちゃんと泣けるようになったんだな。あのバスケくんのおかげで」
「……っ」