不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
もう何もかも声にならなくて、コクリッと1回だけ頷く。
極限まで涙を堪えていると、悠太くんはいきなり大きな声で「伊都、お前なんて顏してんだよ」と言って笑った。
どうして、この期に及んで笑ってくれるんだろう。
どうしたら、悠太くんみたいな人になれるんだろう。
「悠太くん」
「ハハッ!伊都は本当にいいヤツだから、誰よりも幸せになる資格があるよ」
「そんなこと……」
「そう考えたとき、俺じゃ役不足だってすぐ思った。お前を本当に幸せにできるのは、あのバスケくん以外いないなって」
「……っ」
「俺はさ。伊都も知ってると思うけど、サッカーしか取り柄がないし、今脇目も振れないくらい余裕もないんだよな。俺より強いヤツはいくらでもいて、よそ見するとすぐ落ちていく」