不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。
悠太くんは「だから、伊都の選択は間違っていない」と言って、私のおでこに手を置いて熱を確認した。
お母さんから渡された薬が効いてきたのか、だんだんと眠たくなる目をなるべくカッと開いて、せめて悠太くんが部活に行くまでは起きておこうと躍起になる。
けれど私の意志とは反対に、ぼやけていく視界の中でだんだんと瞼は重たくなった。
だから最後に、薄れていく意識をどうにかつなぎ止めながら、悠太くんに問いかける。
「悠太、くん。私たち、これでもう……終わっちゃう?」
「ん?」
「もう、悠太くんと私は幼なじみではいられない?」
「あー……」
悠太くんがなんと言ったのか、今となっては曖昧なのだけれど、それでも眠りにつく直前に私は心底安心していたから、きっと……悠太くんはまた私を甘やかせてくれたのだと思う。
『――いや、ずっと幼なじみだろ。変わんないよ』
『――伊都が嫌じゃなかったら、俺の気が済むまで好きでいさせてくれると……助かる』
『――ホント俺、こういう系の話は得意じゃないんだけど、でもさ。お前が俺の幼なじみで、よかったって思うよ』