不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。










「だからね?伊都ちゃんはもう俺に、十分すぎるくらいのことをしてくれているんだよ」



ちょっと分かりづらいよね、と付け加えて、律くんはまた笑う。



律くんが笑うから、深く考え込んでいた私も釣られて笑った。





「それとね?本当はもう1つ、ここにこさせてもらった理由があるんだよ」


「な、なんですか?」


「さっき伊都ちゃんのお母さんには伝えたんだけどね。南野選手の、お墓に手を合わせたいと思って、お願いしに来たの」


「お父さんの?」


「そう。亡くなった知らせを聞いてから今日までずっと、信じたくないって気持ちもあって敢えて触れてこなかったんだけど……、もうそろそろ受け止めくちゃって思ってね」





律くんは私と出会ってすぐのころ、お父さんのことを唯一尊敬しているプロバスケプレイヤーだと言っていた。



それゆえに亡くなった事実から目を逸らしたい気持ちは、痛いほどよく分かる。




だけどそれを克服しようと思いたった経緯の裏にはきっと、何か変化があったのだと思う。





私は律くんの、そんな部分を支えてあげられたらと思う。


まだそれが何なのか、実際にどういうことなのかは不明だけれど。




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